124.あるがままに引き継ぐ単純承認、債務まで引き継ぎたくないときの限定承認 (2017-04-08)
■■あるがままに引き継ぐ単純承認
民法では、相続について①単純承認、②相続放棄、③限定承認という3つの方法を認めていますが、特別な手続きをしない限り、相続は「単純承認」が基本です。これは、相続人が被相続人の財産上の権利・義務――資産のプラス・マイナスに関係なく――をあるがままに承認し、相続することです(民法九二〇条)。ちなみに、単純承認で相続されたものを「単純遺産」といいます。
そして、相続人が放棄も限定承認もしないで一定期間(相続人となったことを知ってから3カ月の熟慮期間)を経過した場合は、自動的に「その相続人は単純相続をしたもの」とみなされます(民法九二一条二号)。葬儀後に落ち着いたら、放棄・限定承認を行うかを十分に検討しましょう。
また、以下のような行為が行われたときにも、相続人が単純相続をしたものとみなされます(民法九二一条)。
・相続放棄または限定承認の手続きをする前に、相続財産の全部または一部を処分した場合。ただし、相続
財産の現状維持のための保存行為として処分した場合と、民法六〇二条で定められた期間内の短期間の賃
貸はこの限りではありません。
民法六〇二条でいう期間内の賃貸借は、①山林の賃貸借(植林や伐採を目的とする)は10年以内、②土地の賃貸借5年以内、③建物の賃貸借3年以内、④動産の賃貸借6カ月以内。
・相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内に、限定承認または相続放
棄をしなかったとき
・限定承認または相続放棄の手続きをとった後で、相続財産の全部または一部を隠匿し、密かに消費したり
、悪意で財産目録に記載しなかったとき
■■債務まで引き継ぎたくないときの限定承認
被相続人に借財が多く、マイナスの財産がどれだけあるか分からないが、一応相続しようとする場合には「限定承認」という方法があります。これは「相続によって得た財産の限度以内で被相続人のマイナスの義務を継承する」というものです。被相続人の債務を弁済するにしても、自腹を切る必要がありません。
この限定承認をするには、自分が相続人になったことを知った時点から3カ月以内に家庭裁判所に申述する必要があります(民法九二四条)。この際には、「限定承認申述書」とともに被相続人の財産目録を家庭裁判所に提出します。この財産目録には相続財産の内容が種類別に詳しく記載されていることが必要です。限定承認は、家庭裁判所に申述が受理されなければ効力がありません。
相続人が複数の場合は、全員一致による限定承認が行われなければならず、1人でも反対する者がいればできません(民法九二三条)。
ちなみに、限定承認は一種の清算です。このため、相続財産は「特別財産」として扱われることになり、債権者などへの除斥公告が行われた後に財産を換価して債権者に弁済されます。
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